TEAM空想笑年『TABOO』について空想寄りの考察

沼にハマりました

そういう事です。それが全て。そういう話をします。

 

小劇場沼ってなんなの?

前回書いた記事でもちょっと狂い始めちゃったんですが、また沼にハマりました。この沼の事、私は小劇場沼って呼んでます。呼んでるんだけど、かなり語弊のある呼び方なので弁明させてほしい。

小劇場沼とは言っても、小劇場に出てる俳優さんを推す沼じゃなくて、小劇場で上演された作品を推す沼なんです。私が言う小劇場沼はね。人には人の沼があるから。

でも、そもそも演劇の作品にハマるってどういうこと?っていうのを一回言語化しておきたい。

演劇の魅力の源泉として考えられていたものは、人同士が直接その場で相対し、同じ空気を共有する「同時性」であり、同一公演であっても、全く同じ舞台は二度と出来ないという「一回性」でした。

 この言葉が演劇の芸術性を完璧に指してると思ってて、小劇場で上演されてる作品ってまさに「同時性」と「一回性」の芸術だと思うんですよ。ロングランされてる訳じゃないし、次々に作品が発表されるから観てる方も出演する方も新しい作品にどんどん移り変わっていくから余計に「一回性」が強い場所だなって思うんです。見た人も役者も決してその作品の事を忘れているわけではないけど、一度公演が終わってしまえば滅多なことがない限り再演はされないし、よほどの人気作じゃない限り何年後とかに振り返って話をするとかもないじゃないですか。人生の中でたった1週間だけ見られる物語っていう儚さの極地にあるのが小劇場なんだと思うんです。私は。

しかも、物語っていうのは大抵、登場人物の全ての人生を描いているわけではないですよね。物語そのものも、登場人物達の切り取られた人生の断片なんですよ。その、登場人物たちの断片をより密接に見て、触れて、感じることができるのが小劇場なんです。

”限られた期間だけ目撃することのできる、登場人物たちの限られた時間”が小劇場で上演されている作品なんです(個人的な見解)。

 

でも、それって寂しくないですか?それだけで終わっちゃうのって、悲しくないですか?

 

寂しい、悲しいって思ったあなたは素質があります。今すぐ始めましょう。考察を!!!

そうなんです、つまるところ、小劇場沼っていうのは”小劇場で上演された作品を考察しまくって作中で語られなかった物語を補完する沼”ってことなんです!!!!!!!

このシーンでこの人はどんなことを考えてたのか、とか、言葉では語られてないけどこんな思いがあるんじゃないか?とかを考えるとより楽しいんです。物語を100倍楽しもう。

 

もうわかりましたね、小劇場沼。いいですよ、小劇場沼。一緒に浸かりませんか。

長々弁明したところでようやく本題です。

 

登場人物からTABOOを考える

今回ご紹介したい沼はTEAM空想笑年さんの第九回本公演『TABOO』です。諸々は前回の感想記事を参照してください。

0-namakemono-0.hatenablog.co

物語を考えるにあたって、個人的にはいつもシーンを主軸にして振り返ったり、登場人物を主軸にして考えたりするんですが、今回は登場人物を主軸にして考えます。なぜなら『TABOO』は登場人物たちがめちゃくちゃ魅力的だったから。

登場人物たちの中でも特に心惹かれた弐月悠人大政銀二に焦点を当てて考察を深めたいと思います。考察を深めるという事は、即ち沼を深めるという事!!!!すごいことになるぞ。ずっと苦しんでいる未来が見えます。

ちなみにこれは自分に言い聞かせてるんですが、考察を深めていく上で一番気を付けないといけないのは、根拠のない考察はしない事。これめちゃくちゃ大事で、ただでさえ明言されてない可能性を探し回っている身なので、根拠のない考察はただの二次創作ですから。二次創作も大好きだけど、考察と二次創作はちゃんと棲み分けたい。

できるだけ頑張る。なるべく空想しないように頑張る。空想したとして、二次創作にならないように頑張る。

 

西城組と東郷組

まず、登場人物たちを考察していくにあたって大前提となるそれぞれの組について考えたいと思います。

そもそもヤクザってどんな人たちなの?という所から出発しましょう。なんとなーくヤクザって怖い人たち、というイメージはありますがTABOOのヤクザ達は一般的なイメージに当てはめて考えると齟齬が生じそうだったので。

 

ちなみに、私のぼんやりしたイメージではなくWikiではこういう説明はありました。

ヤクザとは、組織を形成して暴力を背景に職業として犯罪活動に従事し、収入を得ているものを指す。

集団を特徴づける要因の一つに集団内部の親分子分の結合がある。また下っ端に該当する場合は「チンピラ」と称される。

(引用:ヤクザ - Wikipedia

ヤクザのWikiを調べてたら、ヤクザの語源についてこんな説がありました。

他にも、歌舞伎役者の派手な格好を真似た無法者(傾(かぶ)き者)のことを「役者のような」と言っていたことから「ヤクシャ」が訛って「ヤクザ」になったという説、「役戯れ」(やく ざれ)から来たという説

(引用:同上)

もしかして、ヤクザが演劇をするって設定はここから…?なんて思いましたが気のせいかな…。

つまり、ヤクザというのは暴力や犯罪活動を主軸にして生活している組織の事なんですね。確かに、西城組は暴力や犯罪行為を主軸にしているような描かれ方をしていました。主に演出家を金で買収する、卓也を実力行使で誘拐する、など一般的なイメージのヤクザらしい行動です。

でも、東郷組はどうでしょうか?

はじめさんは卓也が借金をしている劇団を恫喝したり、若手が喧嘩をしたり、と日常的に暴力や犯罪に身を染めている描写がなくはないですが、西城組よりは遥にマイルドな表現だと思いました。東郷組の人達はとても優しそうに見えるので、ドーラさんが「東郷組もヤクザなんだ」と諭すシーンもありました。

同じヤクザでも西城組と東郷組でこんなに雰囲気が違うの、なんで?

人柄、と言ってしまえばそれで終わりですが、私はこう解釈しました。

 

東郷組の人々はヤクザ、というよりは任侠の考え方に近いんじゃないかと思います。

任侠(にんきょう、任俠)とは、仁義を重んじ、困っていたり苦しんでいたりする人を見ると放っておけず、彼らを助けるために体を張る自己犠牲的精神や人の性質を指す語。現代的にはヤクザと重複する面もあるが依拠する信念を違える。 また、ヤクザ史研究家の藤田五郎の著述によれば、正しい任侠精神とは正邪の分別と勧善懲悪にあるという[1]。 仁侠(じんきょう)義侠心(ぎきょうしん)侠気(きょうき)男気(おとこぎ)などともいう。

(引用:任侠 - Wikipedia

ヤクザと任侠は似て非なる者で、東郷組の人々は生活形態こそはヤクザとして暴力や犯罪に手を染めて生きていますが、その精神の根底にあるのは任侠の精神だったんじゃないでしょうか。

そう思うと、東郷組の人々は任侠的な描かれ方をしていますね。カタギの卓也や春子さんをヤクザの世界に触れさせてしまって後悔するはじめさん、弐月に襲われている春子さんを助ける金三郎さん、極めつけは西城組から演劇をするために東郷組に来た小夏ちゃんと千秋さんを迎え入れる東郷組。

東郷組では”仁義”というものが重んじられていると考えられます。一般的なイメージのヤクザとして描かれている西城組、ヤクザとしての生き方をしているが精神的任侠である東郷組、という対比があるんじゃないでしょうか。

 

西城組と東郷組についてざっくり理解したところで、本題に入りたいと思います。

先は長いぞ~~!

弐月悠人と西城組

弐月悠人は西城組組長の西城喜一の甥っ子で若頭補佐なので、ひとまず西城組と弐月悠人の関係について解像度上げたいですよね。まずはそこからですよね。ちなみに今の解像度は46dpiくらいです。ひくひくひっくポーツマスじゃん。

弐月の事を掘り下げるうえで考えたい絶対に考えておきたい問題があります。

 

それは、弐月の前科はなんなのか?問題です。

弐月の登場シーンといえば、壱ノ瀬さんと北河さんが出所する弐月を迎えに来ている場面でした。後々組長も来ます。

ということは、弐月は何らかの罪を犯して投獄されていた、ということですよね。これオタク的にはめちゃめちゃ気になる。弐月という人間を理解しようってなると一番最初にこの壁にぶち当たりました。でも、犯罪の事には詳しくないので、ネットの叡智をお借りしましょう。

弐月が喧嘩っ早い事(出所して2時間で直政さんを殴る暴行RTA記録保持)、常にサバイバルナイフを持ち歩いている(可能性がある)事、そして出所に若頭・相談役ひいては組長が顔を連ねている事を判断材料にすると傷害罪傷害致死の2つの可能性が考えられると思いました。しかも、一般人相手の事件で組長が歓迎するとは思えないので、ヤクザ絡み、もっと言うと東郷組との抗争の末の事件なんじゃないかと思うんです。

傷害罪の場合、

傷害罪の刑罰は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。実際に言い渡される刑(量刑)は、この範囲内から決定されます。

(引用:傷害事件で逮捕! 初犯の場合、付加刑や処分内容はどうなるのか?)

だそうです。ここで気になるのが、50万円以下の罰金というところ。西城組はご存知の通り金に糸目を付けないタイプ。もし、組長の可愛い甥っ子が逮捕・収監となったら金の力でなんとかしそうなものです。でも、それをせずに(できず?)弐月が収監されてしまったのは、もっと刑罰が重いから、という可能性がありますね。

となると、傷害致死罪の可能性が大きくなってきました。

傷害致死罪の法定刑は、「3年以上の有期懲役」つまり、3年以上20年以下の懲役です。実際に刑務所に入らなければならない具体的な刑期や量刑は、この法定刑の幅の中で、それぞれの事案の特徴を考慮して決定されます。

参考までに、傷害罪の法定刑は、1か月以上15年以下の懲役か、または1万円以上50万円以下の罰金と定められています。これと対比すると、傷害致死罪は、第1に罰金がない点、第2に刑の期間が最低でも3年とされている点で、傷害罪よりもはるかに重い刑罰が定められていると言えます。

(引用:傷害・傷害致死の量刑は?|傷害の弁護士相談 | 傷害・暴行事件で逮捕されたら

引用にあるように、傷害致死罪は罰金がないので西城組は手出しできなかったのでは?と考えられます。あの組長が黙って弐月が出てくるのを待つしかできなかった背景を考えると、組長的には悔しい期間だったんだろうな、としみじみしちゃいますね。


ところで、弐月の前科が傷害致死罪だったとして、どのくらいの期間収監されていたんでしょうか?

ここの判断材料はめちゃくちゃ少ないんですが、東郷組と西城組の若手たちが喧嘩をするシーンで圭が「弐月悠人だ!」と言ってるのに対して、忠明が「え、やばいの?」と言ってるんですね。つまり、東郷組の2代目である忠明が弐月悠人の存在を知らなかったという事が考えられます。これは憶測でしかないんですが、忠明の年齢が20~23くらいだと考えると、弐月10年~15年収監されていたんじゃないでしょうか。弐月は西城組の若頭補佐に当たるので、忠明が名前すら聞いたことがないというのは物心がついた時にはもう弐月は収監されていた、という事なのでは…。

ちなみに刑期の参考はこちら。

yakuzanews.jp

また、弐月が銀二さんと対峙した際に「厚生は失敗したみたいだな」と言われています。銀二さんは弐月の素行の悪さを知っている上に、弐月が収監された時に既に東郷組にいた、ということですよね。

え、もし仮に弐月が10~15年収監されていたとして、捕まった当時20歳だったとしたら弐月さん30~35歳という事…!?!?わ、若いね…。

弐月があまりにも30代に見えないので、未成年の時に捕まったのか?と思い調べました。

少年(20歳未満の者)の場合、原則として、罰則は科されず、家庭裁判所送致→観護措置、調査官調査→少年審判→保護処分という経過をたどります。

もっとも、故意の犯罪行為により被害者を死亡させ、行為時に16歳以上だった少年にかかる事件については、原則、事件が家庭裁判所から検察庁へ再び送致されます。これの事件のことを原則逆送事件と呼んでおり、傷害致死罪もこの事件に含まれます。検察官の元へ送致されると、成人と同様の刑事手続で進められていきます。裁判となれば、一般人が裁判に参加する裁判員裁判を受けなければなりません。裁判で有罪と認定されれば、成人と同様に刑罰を科され、刑務所に服役しなければならない可能性もでてきます。

(引用:傷害罪と少年院送致 | 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所

なるほど、事件当時弐月が未成年だった可能性が大きくなってきました。事件当時に16歳だったとしたら、26~31歳。見えなくはない…。妥当な年齢ですか…?ちなみに私は初見の時弐月は25歳くらいだと思ってました。

総括として、弐月の前科は傷害致死罪で10~15年収監されていた可能性がある、という事です!

銀二さんの20年といい、弐月の刑期と言いTABOOの時間経過を考えると胸が苦しくなりますね。これがヤクザに人生を捧げた人間の重みということか…。

心臓を叩いて苦しみを紛らわせたところで本題に入りたいと思います。

弐月悠人と西城組大政銀二と東郷組を考えていきましょう~!道のりは長いぞ!

 

 まずは弐月が文字通り命を賭して守ろうとした”西城組”。その面々と弐月の関わりを考えながら物語を掘っていきましょう。スコープ片手に穴を掘り続けるんだ…。

 

西城喜一

まずは、西城組組長であり、弐月の叔父(伯父の可能性もある)の西城喜一との関係を考えます。前述した通り、喜一さんは弐月をかなり長い期間失っていたので、出所の出迎えはそれはそれは熱烈な歓迎だったんじゃないかと思いました。

そもそも、西城喜一という男はめちゃくちゃ血縁者に甘いと思うんです。甘いというか、溺愛してるというか、愛が深いというか。でも、その愛っていうのは一般的な愛では決してなくて、ヤクザとして生きてる男としての愛だと思うんです。言ってしまうと、歪んだ愛情。弐月を西城組に対する歪んだ信念の持ち主だと思っていますが、そもそもの歪みの源流が喜一さんなのでは?と思う事も無きにしも非ずという事ですね。

そして、誰よりも弐月悠人という人間を理解していたのが喜一さんだったんだと思います。

 

ここで考えたいのは、西城喜一は弐月の抱えている感情に気付いていたのか?というポイント。

この弐月の抱えている感情というのは、前述した西城組に対する歪んだ信念と同義です。言い換えると、大政銀二に対する憎悪とも言えるヤツ。

弐月は喜一さんの甥っ子ですが、「俺の親父は喜一さんだけだ」と言うように、喜一さんを本当の親の様に慕っています。それはヤクザ特有の疑似的な血縁関係を指しているんでしょうか?私はそうではないような気がしました。TABOOにおいて、弐月の両親に当たる人物が描かれていないのが大きな意味があると思います。TABOOではヤクザを描いていることもあって”血縁関係”というものが大きな意味を持つと思うんですね。ヤクザというのは疑似的な血縁関係で結びついている人々なので、西城組にしろ東郷組にしろ疑似的な血縁関係というのは絶対的なもののはずです。その対比として本来の血縁関係である小夏ちゃんと喜一さんや忠明と冬華さんの親子が描かれているので、弐月の両親について何も触れられていないのは何か作為を感じます。

弐月の両親はもしかするともうこの世には存在しないんじゃないでしょうか。それが事故なのか、ヤクザの人間であることによる事件なのかはわかりません。弐月が本来の両親を捨ててヤクザである喜一さんの元に来たという事も考えられますが、その場合は弐月の世界から排除されたという形でしょうか。

つまり、弐月は幼少期、もしくは生まれてすぐに既に西城組の人間だった可能性があります。ヤクザ(暴力団)の構成員の多くは15歳~24歳で加入する傾向にある事から、西城組のどの構成員よりも深く西城組に結びついていたという事なのでは…?

 

ちなみに、ヤクザの構造や活動については以下のサイトを参考にしています。

www.npa.go.jp

西城組も東郷組もフィクションの存在なので、現実のヤクザとは大きく違うとは思いますが、参考程度に…。

 

幼少期から”西城組の人間である”というアイデンティティを抱えて弐月は生きていたと思うんですが、そのアイデンティティを植え付けたのは他でもない喜一さんだと思うんです。

暴力団の社会にあっては、親分・子分の上下関係は理屈を超えた絶対的なものとされ、親分の命令であれば、理非善悪を問わず、これに従うのが子分としての当然の義務であり、かつ美徳であるとされている。そして、こうした義務や暴力団社会の掟(おきて)に反し、親分の支配や集団の一体性を乱した者に対しては、厳しい制裁を加える一方、親分等の命令に従い組織に貢献した者に対しては、組織内のより高い地位をはじめ相応の報酬を与えるなどして内部秩序を保っている。

 とあるように、弐月はヤクザとしての美徳を喜一さんに教えられ、それを重んじていたんではないでしょうか。きっと弐月が収監されるきっかけになった事件で、弐月に殺人を示唆したのは喜一さんなんじゃないかな(ない話)。金三郎さんを襲って卓也を誘拐したのも、喜一さんからの命令だと思います。

 

そんなある種ヤクザという生き方を一番体現している弐月が、殺してしまうほど許せなかったのが大政銀二という存在ですね。たぶん、弐月と銀二さんは西城組で生活を共にしてた期間があると思うんです。きっとめちゃくちゃ短い期間。銀二さんの存在が東郷組に認知される前に東郷組に潜り込まないと意味がないので、銀二さんは西城組に加入してすぐに東郷組に入ったはず。西城組にいた期間はきっと長くても2年くらいなんじゃないかな。そんな短い期間で喜一さんの信用を勝ち取れるのが銀二さんという男のハイパースペックの高さを表わしてるとも言えますよね。それとも何年かは表に存在を知られないように隠してた秘蔵っ子だったとか…?どちらにせよめちゃくちゃ早い段階で西城組の中に地位を確立させたと思うんですよね。

弐月が16歳で収監された仮定に即して考えると、銀二さんが西城組に入ってきた時弐月は6~11歳だった事になります...??。計算めちゃくちゃ難しい…。間違ってるかもしれない…。幼少期からヤクザとしての美徳を重んじてきた弐月にとって、一度西城の人間になった者が敵対する東郷の人間になる事は、それはそれは許せない出来事だったと思います。きっと喜一さんはそれが西城組の為になる、と弐月に説明はしてるはず。でも頭では理解してても心では納得できない。そういう感じだったんじゃないのかな…。

 

そんな弐月の銀二さんに対する感情を、喜一さんは全て知ってたんだと思うんですよね。むしろ、全てわかった上でそう差し向けた、とも考えられる気がする。銀二さんという存在を弐月に焚き付ける事で、弐月をより強固な西城組の人間に仕立て上げようとした可能性もありますよね…。結果的に西城組の為に人を殺すことも厭わない子に育った訳ですし…。

喜一さんが全てを知ってるのは、喜一さん役の夢麻呂さんのお芝居でちゃーんと表現されてて震えました。劇中で喜一さんが弐月を手で制する場面が何回かあるんですよ…。みなさん気付きましたか…!?!?

・東郷組が攫われた卓也を救出する為にカチコミするシーン

「おめぇら誰だ!?」と言いながら、下手から出てきた弐月を手で制する喜一さん。

ここ、壇上では最下に銀二さんがいて、弐月は銀二さんにナイフを向けてるようにも見える…。でもここのシーンは、銀二さんをというよりは東郷組に面々を殺しかねないから手で制してるようにも見える。

・大立ち回り前芝居

「睨む相手間違えてんじゃねぇよ、おしゃべりはそこまでだ」と言いながら、無言で銀二さんに向かっていく弐月を手で制する喜一さん。これは完全に銀二さんに対して弐月が何かしら抱えているのを喜一さんは完全にわかっている…。

 

以上から考えて、喜一さんは弐月が抱えている感情に気付いていたと言えますね。むしろ、そう差し向けた人間説も…。ウッ…苦しい…次に行きましょう…。

 

壱ノ瀬涼

次は西城組若頭の壱ノ瀬さん。この人もかなり西城イズムの強い人で、冷血っぷりを遺憾なく発揮してて最高でしたね。西城組で実働部隊(物理)が弐月だとすると、壱ノ瀬さんは実働部隊(頭脳)という感じ。どっちもやばいし、どっちも最悪な事してそうでいいですね。

そんな壱ノ瀬さんと弐月の2人を考えるうえで気になるのは、もうこれしかないでしょう。

2代目はどっちがなるのか!?

そういうことですね。

しかし、通常、跡目は自分の直系の一子分(「イチノコブン」、実子分ともいいますが、昨今では一子分のことを若者頭、若衆頭、若頭などと呼ぶのが一般的となっています。)を指定しますが、例外として兄弟分を選定したり、一子分以外の子分を選定することもたまにはあるようです。ただ、自分の実子を跡目とすることはありません。

(引用:暴力団ミニ講座その9

現実の暴力団の跡継ぎを決める場合は上記の感じのようです。ですが、西城組・東郷組はフィクションなのでこの通りではありませんね。東郷組の2代目が栄吉さんの実子の忠明なので、TABOOの世界では跡継ぎは血縁が優位と考えられます。

では、西城組の2代目は誰なんでしょうか?

小夏ちゃんは喜一さんの実子ではあるけど女の子なのできっと候補外。とすると、有力なのは現若頭の壱ノ瀬さんか、甥の弐月か?と思いました。ヤクザの人が跡継ぎを決める条件とか何も知らないですけど。

でも、壱ノ瀬さんが2代目候補か?と思って見ると、まだまだ喜一さんのやり方に染まり切ってない感じがするような…。個人的な偏見だと、跡継ぎを決めるときって絶対的な信頼を寄せられるかどうかが決め手になってる気がするんですよね。そう思うと、喜一さんの壱ノ瀬さんに対する接し方はある程度の信頼があるにしろ、絶対的ではない感じがする。

逆に弐月が2代目候補か?と言われると、喜一さんは弐月に信頼を寄せてそうだけど弐月自身が危うさを抱えているので2代目という感じでもないような気がする。

え、じゃあ誰が2代目なの!?って思ったんですが、ここでハッしました。

おる!!!!喜一さんが絶対的な信頼を寄せてそうな人がおる!!!!

そうですね。銀二さんですね。

弐月と西城組だって言ってんのに絶対に銀二さんが食い込んでくるな。銀二さん無くして西城組語れない問題。

 

銀二さんが一番2代目に近いと思うと、銀二さんが西城組に戻った時の壱ノ瀬さんの反応がなんとなく納得できるような気がしました。

壱ノ瀬さんも銀二さんがスパイとして東郷組に行ってる事情を知ってる人間ですよね。ということは、銀二さんが西城組に戻ってきたという事は、同胞が戻ってきたという事で、本来であれば喜ばしいことのはず。弐月の出所を迎えに行ったように、銀二さんも迎え入れる…はず。本来であれば。でも、実際銀二さんが戻ってきた時の壱ノ瀬さんの反応は、あまり芳しい様子ではありません。なぜ??

これは空想の話ですが、もしかすると、壱ノ瀬さんは初めから2代目にはなれないと分かった上で若頭をやっていたんではないでしょうか?きっと喜一さんは銀二さんが戻ってきたら銀二さんに若頭をさせるつもりで、壱ノ瀬さんは若頭を間借りしているだけだったのでは。喜一さんはそれを言ってないにしても、壱ノ瀬さんはそれをなんとなく理解してた可能性がありますよね。

組長の言う事は絶対なので…壱ノ瀬さんは従うしかできないので…。

そう思うと、一番最初に弐月を迎えに来たシーンで「兄貴でいい」と言ったのは、頭という地位が仮のものだってわかってたから…!?それは深読みのし過ぎ…。

つまり、誰が2代目なの問題は、壱ノ瀬さんでも弐月でもなく銀二さんの可能性がでかいという結論…。ウッ…また苦しくなってきた…次だ、次…。

 

北河瑞貴

西城組のマイナスイオン供給ポイントこと北河さん。ではなく、相談役の北河さん。

みなさん思いませんでした?相談役ってそもそもなんだ…?

 組織によっては相談役や顧問を設けている組織もあります。
暴力団としてのキャリアが長い方などが任命され、組織の運営ではなく方針や方向性の相談を受けます。
経験が必要となり、長年ヤクザとして活躍した方が多いです。

 (引用:分かりやすい暴力団の組織図・呼び名 | 最新ヤクザニュース

なるほど…???

 ではどのような人物が顧問や相談役になるのでしょう。
六代目山口組で言うと顧問は章友会の石田章六会長です。石田章六は三代目田岡一雄時代から本家の直系組長で、司忍組長よりも本来はかなり先輩に当たります。代替りしていく過程で新しい体制や役職が決められる訳ですが、新組長から特に業界でのキャリアや人物が認められている場合、顧問や相談役に就きます。ただし六代目山口組としての活動の中心は執行部にあり、組織全体に対してはあまり発言権はありません。

組の活動で多忙を極める執行部に対して、顧問や相談役は隠居に近く普段わりと自由な身分でもあります。盃の関係については、主に舎弟盃になりますが盃なしの顧問や相談役という事もあります。隠居と言っても業界での実績や顔の広さでは組長以上という名の売れた人物も多く、業界の重鎮が多いのもこのポストです。

 (引用:役職 | 山口組情報局

なるほど……???

この相談役というポジションは現実のヤクザの世界で理解しようとすると大いに齟齬が生じそうなので、TABOO独自のポジションとして理解した方がいい感じがしますね?

何となくTABOO的に嚙み砕いて理解すると、組の中である程度の地位を築いていて、疑似的な血縁関係の外側にいる人?的な???

弐月が北河さんの事を兄貴って呼ばないのは、相談役で疑似的な血縁関係を結んでないから??稽古のシーンで「悠人、お前怖いよ」って北河さんが言ったのに対して、弐月的には千秋さんに言ってるとしても「ティボルトはこういうやつじゃねえのか」って答えてるし、その後に「こいつらの度胸がないせいだ」って言ってるから、やっぱり北河さんの事は兄貴分と思ってないのかもしれない。

でも、弐月は自分で敬語に厳しい癖に自分はちょいちょい兄貴分に対して敬語抜ける時あるよね…壱ノ瀬さんに対して「地下にいる」って言うし、え…もしかして壱ノ瀬さんと弐月って結構近しい地位なの…?補佐だしね…??弐月が他人に厳しすぎる可能性も拭えないけど。

銀二さんには「20年見ないうちに出世したみたいだな、関西のやんちゃ坊主が」って言われてるので、西城組に入ってきた時は関西で幅を利かせてたヤクザだったのかもしれない。その点では、業界でのキャリアや人物が認められている人間ってのは当てはまってるのかも。で、西城組に入ってキャリアを積んで喜一さんに認められて相談役になったってことかな…?????

直政さんとか桐彦さんが兄貴って呼んでるとこも見かけないし、北河さんが壱ノ瀬さんの事を兄貴って呼んでるところもない気がする…見落としてるだけかもしれない…。

金三郎さんも東郷組の相談役だけど、北河さんとは組との接し方が違う気もするので、その組独特の役職なのかもしれない。面白おじさん枠?

 

四阿桐彦

次は西城組若手の桐彦さん。桐彦さんもいいですよね、若手なりの葛藤とか激情を抱えている感じがすごくしてくる。東郷組も西城組も、重役と若手っていう線引きがかなりはっきりしているので、弐月と桐彦さんを考えた時に重役と若手の空気感の交わりを感じるのがいいですよね。重役と若手の対比を考えるとなると、若手にとっての弐月の存在とは?という点を考えずにはいられない訳です。

 

そもそも、弐月は長い期間収監されていたのでその存在を若手は認知していたのか?っていうのが大きな問題なんですね。弐月の刑期が10~15年だとすると、桐彦さんが23~25歳だとしても桐彦さんが西城組に入った時にはもう収監されてるはずなんです。なので、桐彦さんが入った時、弐月の存在は知らなかったんじゃないかと思いました。2週間前に入った直政さんが知らないのは当然として。

桐彦さんが入った時には西城組には弐月は不在だった訳ですが、でも弐月は西城組にとっては欠かせない存在な訳で、きっと壱ノ瀬さんとか北河さんにその存在を教えられていたんじゃないかなと思います。武勇伝的な感じで。

でもでも、絶対弐月が収監される前に会ってた感じがするんだよな~~~!!!!

ここの理解が一番難しい...。弐月の実刑が10年で桐彦さんが25歳だとすると、ギリギリ2週間とか一緒だったことになる…??桐彦さんめちゃくちゃ早い段階でヤクザになったことになるけど、いけるか…??でも、桐彦さんが10年西城組にいるようには見えないんだよなぁ…。

 

TABOO見た人~~!!!!どう思いますか~~~!!!!

個人的には、出会ってなかった説を推していきたいと思います。

東郷組と西城組の若手が喧嘩する時に、桐彦さんが弐月に胸倉を掴まれてるんですよね。あと、大立ち回りの時も背中蹴られてた気がするし、もしかすると弐月は桐彦さんの事をハッキリ西城組の人間だって認識してないのでは…??

稽古の時に、敬語問題で「てか、お前は誰だ」って言ってるけど、それもお前は何様だの誰だじゃなくて、まじで知らなくてお前は誰だって言ってる可能性も微粒子レベルで存在しますよね。

でも、正直会ってた説も唱えたい。後述するけど、弐月の暴力性の一番の犠牲者は桐彦さんっぽいんだよな。

そう思うと、桐彦さんと直政さんは西城組的に怒涛の時期に入っちゃったんだなぁ、と。ヤクザの世界に足を踏み入れるのだって相当の覚悟が必要だと思うのに、いざ入ったら会った事のないヤバイ兄貴がいるらしい…そろそろ出所だって言ってたけど、どんな人なんだろう…。で、いざ会ったら出会ってすぐ目の前で弟分が殴られ、自分も喧嘩の中で胸倉を掴まれ…。ヤクザって大変~~って思ってたら、ずっと敵だと思ってた奴がまさか自分の組の人間でいきなり幹部に!?ってことでしょ…?

桐彦さんと直政さんは東郷組で力強く生きていってほしい…きっと2人なら大丈夫…西城組で生きてたんだから…。

 

西城組若手2人のスピンオフめちゃめちゃ見たい。ね。

 

参島直政

桐彦さんのとこでも出てきた入って2週間ぴちぴちヤクザの直政さん。出会って2秒で弐月に殴られるかなり不遇の人。入って2週間ちょっとで組がほぼ壊滅ってやばい。激動すぎる。

桐彦さんと直政さんはTABOOの中でもなかなか辛い立場でしたが、1番の被害はやっぱり弐月の暴力だと思うんですよ。殴る蹴るの暴行。そこで考えたいのが、弐月の暴力の常習性についてです。

ここでは弐月が収監される前に桐彦さんと出会ってた世界線で話をしています。色んな世界線の可能性がある。

まず、なんで弐月は直政さんを殴ったのか?確かに不敬罪だとしてもなんで?

可能性としては、

・単純に直政さんにムカついたから

・服役中に大人しくしてた反動

・ただの暴力ジャンキー

ここらへんが考えられるんじゃないかなと思うんです。

1つ目の単純に直政さんにムカついたからは、かなり信憑性高めなんじゃないかと。稽古で桐彦さんが台詞で敬語じゃなかっただけで突っかかるので、直政さんの態度は弐月の中では超不敬罪だったんではないかと。そう思う訳です。北河さんも、お前怖いよって言ってたし、突発的にキレる事が多々あったんじゃないかな。弐月が収監される前は突発的なキレの犠牲はずっと桐彦さんだったんだと思う。西城組の人間として、兄貴として尊敬できるところはあるけど、暴力は振るわれる、みたいな関係。だから、直政さんが殴られる時目を逸らしてたのかな。機嫌悪そうな弐月にはなるべく関わらないようにしよう、みたいな自衛が染みついてる感じ。

2つ目の服役中に大人しくしてた反動も、ありそう。「出て2時間で人殴っちまった」って言ってるのは、後悔というよりは興奮してる感じに聞こえますよね。殴りたくてうずうずしてたぜ~的な。出所してから壱ノ瀬さんに協定の事とか聞かされてたはずなのに、話を聞いた直後に東郷組と喧嘩してるもんな。銀二さんに「若い連中は納得してない」って言ってたけど、1番納得してないのは弐月自身では…????

3つ目のただの暴力ジャンキーも、なくはない。ただ、生まれついたサイコパスではなくて、西城組の人間として生きてたら自然と身についちゃった感がある。ヤクザとして暴力的な日々に身を置いていたので、何かと自分の感情を発露させる手段として暴力が一番近い所にあるんじゃないだろうか。

しかも、東郷組の若手との喧嘩の時とか弐月めちゃくちゃ笑ってるんですよね。楽しそう。だとすると、喧嘩の時に桐彦さんの胸倉掴んだりするのって、ただ単純に殴りたいから?俺の獲物を取るな的な事?弐月、暴力ジャンキー説あると思います。

そうだとすると、暴力の常習性はかなり高かったんじゃないかと考えられますね。桐彦さんと直政さんは東郷組の傘下で平和に暮らしてほしいね。

 

西城小夏

人畜無害に見えて、結構西城イズムを受け継いでる小夏ちゃん。小夏ちゃんは本当にヤクザの世界を捨てて幸せになってほしい。改名しよう。

そんな小夏ちゃんと弐月はいとこの関係に当たるんですが、もしかして、弐月は身内には優しいのか?と考えられますね。

 弐月は演劇に何か興味ない感じで、1回目の稽古ではずっと座って一言もしゃべらずただ見ているだけですが、2回目の稽古ではちゃんと立って稽古に参加してしかも台本を見ずに台詞を覚えている。ティボルトの理解もなんとなくしている。

弐月、もしかして演劇の才能あるのでは?と思うと同時に、小夏ちゃんには甘いのか?って思いました。演劇をやれっていう喜一さんの命令絶対守るマンなのか、いとこの願いは聞いてくれるタイプなのか。

でも、3回目の稽古で弐月が不在なのを小夏ちゃんが「絶対サボり」って言ってるので、小夏ちゃん的には喜一さんの命令でしぶしぶやってると思ってそう。

どうなんだろう、喜一さんの命令絶対守るマンなのか、身内には甘いマンなのか。どっちにしてもいいよね。弐月の人間味に触れたい。

大政銀二

もはや大政銀二の文字列で泣けるようになりました。限界オタクです。

TABOOの中で最も大きな業を背負いし漢ですね。銀二さんの死は悲しいけど、生かされたまま東郷組の傘下に入る方が銀二さんにとっては地獄だと思うので、せめて西城組の人間として死ねたことが救済だと思いたい。いや、本心を言うと死んでも行く先は地獄であってほしい。裸足で茨の道を突き進んでほしい。死すら銀二さんの魂を救えない程の業の深さを感じる。夢かな。

息をするように妄言を繰り広げた所で本題ですが、弐月と銀二さんで何を考えるって、これしかないでしょ!

何故2人は道を違ってしまったのか。

ですよ。1番考えてて楽しいし苦しい。TABOOのあらすじ読んでこんな苦しい沼があるなんて想像もできなかったよ...。サムズアップで沈んでいきます。この考察に関しては99%の空想です。許して…。

 

そもそも、弐月と銀二さんの目指すところは同じなはずなんです。西城組の栄光。繁栄。絶対的権力。そういうところ。その為に自分の身を賭す事も厭わない。西城組の為に地獄に身を堕とす事だって構わない。弐月は刑務所という地獄、銀二さんは東郷組という地獄。

なのに、何故2人の行き着いた先が死だったのか。

 

2人の西城組の人間としての生き方を導いたのが西城喜一だというのは前述の通りですが、2人の行く末を決めてしまったのも西城喜一その人なのではないかと思います。

西城組と東郷組の抗争の中で、西城喜一が命を落としたため協定を反故にし抗争に持ち掛けた西城組は圧倒的に不利になりました。この時、既に弐月は西城組が敗北する事を理解していたんだと思います。東郷組の芝居を瓦解させる事もできず、組長を失い、西城組の勝ち筋すら見失った結果、弐月は西城組としての勝利ではなく、弐月個人としての勝利を求めたんだと思います。その勝利条件が”裏切者に仇をなす事”だったのではないでしょうか。西城の崩壊が確定しているならば、自分の理想像としての西城組の人間として散ろうとしたんだと思うんです。その理想像としての西城組のノイズになっていたのが、裏切り者の銀二さんという訳です。本質的には銀二さんの行為は裏切りではなかった訳ですが、弐月から見るとただの一度でも西城組から離れ敵側についた銀二さんは裏切り者だとしか思えなかったんでしょうか。

銀二さんを殺した後、東郷組の頭であるはじめさんは狼狽して弐月に背中を向けます。もし、弐月が西城組としての勝利を求めていればこの時にはじめさんを殺すはずです。殺せる可能性は大いにあったはず。でも、それをしなかったのは西城組としての勝利を放棄し、個人としての勝利を求めていたからなんだと思います。

西城組の人間として生きてきた弐月の個人的な自我の発露だったのかな。死の直前に、西城組の弐月悠人としてではなく、一個人としての弐月悠人の幸せを求めたのかな。

そう思うと、めちゃめちゃ、めちゃめちゃ心が苦しい。喜一さんの元で、西城組の人間として生きていたのは決して不幸せなんかではなく、弐月としても幸せを求めていたとは思うんだけど、喜一さんは弐月の銀二さんへの憎悪を理解していた上でそれを抑え込んでたので、そこに一個人としての弐月の幸せはなかったのかな。あくまで西城組の人間としての弐月悠人としての幸せ。

 

でも、もし西城喜一が生きていたらどうなったんでしょうか。

描かれなかった方の可能性を考えるのは野暮だとは思いますが、考えたい。きっと、喜一さんが生きていたら、弐月は銀二さんへの憎悪を抑えて西城組の繁栄を優先させたのかな。それとも、生まれて初めて喜一さんの命令に背いて、仇をなしてたんだろうか。でも、きっと、喜一さんが生きていたら弐月の進む先は苦しみの道だったと思うので、喜一さんの死をきっかけに個人の幸せを求めて死ねた方がハッピーエンドだったんだろうな、と思います。

ウッーーー!!胸が苦しいーーー!!!助けてくれーーー!!!

 

次は平和な東郷組について考えましょう。心を救おう。

 

大政銀二と東郷組

先程平和な東郷組と書きましたが誤りです。こちらの方が地獄かもしれない。

裏切り者(裏切りではない。心はずっと西城組の人間なので。)の銀二さんに向き合っていきましょう。

でも、正直銀二さんについて考えると、描かれてない事の方が多いので空想9割くらいになっちゃうんですよね。初っ端、なるべく空想しないように頑張るって書いたけど、あれは嘘だ。

ということで、虚構を突きながら銀二さんの可能性を考えていきます。あと、ちょいちょい銀二さんを挟まずに考えるところがあります。あんまり深く考えないでください。

 

優しい羊の皮を被って20年間東郷組の面々を欺き続け、組長の死をきっかけにあっさり皮を投げ捨てた銀二さん。東郷組ではめちゃくちゃ面倒見がよくて、腕っぷしが強くて、頼れる兄貴で東郷組の精神的リーダーという描かれ方でしたが、実のところはかなりの冷血漢で、目的の為なら人を傷つけることも厭わない、サイコさんでした。

そんな冷血銀二さんを考えると、色々疑問が浮かんでくるんですが、ここでは何故栄吉の死を待ったのか?について考えたいと思います。

作中で明言されてる通り、はじめさんが若頭になる前は銀二さんが若頭でしたね。若頭と言うと、組のNo.2です。次期組長として活躍してたって言われてるし。その地位があれば東郷組を内側から崩壊させることも容易かったのに、それをせずに栄吉の死を待って西城組に戻ったのは何故なんでしょうか?

これはまじのまじで描かれてないので、ガチガチの空想です。ごめんなさい。

おそらく、銀二さんの中で最も重要だったのは東郷組を崩壊させる事ではなく、西城組に戻る事だと思うんです。銀二さんも弐月と同様に西城組に対して並々ならぬ思いを抱えた男なので、東郷組の人間として東郷組を崩壊させるのではなく、西城組の人間として東郷組を崩壊させる、という点に美学があったんじゃないでしょうか。

そうじゃないとしたら、自分を信用しきった人間を急に裏切る事で相手の狼狽する様を愉しむヤバイ奴になってしまうので。

東郷組から情報を得られるだけ得て、組長が死んで西城組の圧倒的優位が確定した段階で西城組に戻る、というのが銀二さんが20年間追い求めた完璧なゴールだったんだと思います。大政銀二、恐ろしい男。

 

そんな恐ろしい男と心優しい面々について考えるのはちょっと心苦しいですね。いいぞいいぞ。

 

東郷栄吉

まずは東郷組組長の東郷栄吉さんについて。

そもそもの根本を考えると、栄吉さんが銀二さんを東郷組に入れてしまったのが全ての始まりなんですよね。

何で銀二さんを東郷組に入れちゃったの???

そこを考えていきましょう。これも空想です。あれ、空想しかないな。

 

西城組の時にちょっと触れましたが、銀二さんはそもそものスペックがめちゃ高いと思うんですね。喜一さんから信頼を勝ち取って東郷組に送り込まれるくらいには、頭も切れるし、腕も強い、人柄もいい(偽りだとしても)ので、栄吉さんとしては良い人材だと思って迎え入れた訳です。喜一さんが初めて銀二さんに出会った時みたいに(ない話)。

そして冒頭で触れましたが、東郷組の任侠精神も大いに関わってくるんじゃないかな、と思いました。東郷組の人々が西城組から来た小夏ちゃんを迎え入れたように、根無し草(を装っている)の銀二さんを迎え入れるのは栄吉さんにとっては当然のことだったのかもしれません。もしかして、栄吉さんは銀二さんが西城組の人間だった事を知った上で東郷組に迎え入れたとかいう可能性がありますか…?そうだとしたら、栄吉さんは本当に任侠の男だったんだな…。

ない話は置いておいて、銀二さんに若頭を任せて、次期組長まで言わしめてるという事は、東郷組でも信頼はかなり厚かったと考えられます。その点に関して言えば、送り込んだ喜一さんの戦略勝ちとしか言いようがない。でも、きっと喜一さんも銀二さんも予想外だったのははじめさんとの出会いだったんじゃないかな、と思います。これははじめさんの時に詳しく書きたい。

 

そんなハイスペック人間の銀二さんを、門前払いするのは不可能だったと考えられますね。栄吉さんは悪くない。銀二さんがハイスペックなのが悪い。ね。

 

馬場金三郎

早速銀二さんを隅に置いておきます。

ここでは金三郎さんと忠明について考えさせてほしい。空想だが。

北河さんのところで相談役ってなんだ?という事を考えましたが、東郷組での相談役ってどんな役割なんでしょうか?

西城組での相談役は、組に深入りしすぎず適切な距離感を保っている立場という感じでしたが、東郷組ではかなり相談役が中心人物のような感じがあります。それは金三郎さんの人柄が大いに関係しているんだと思いますが。相談役の雰囲気で組の雰囲気が変わってるんですかね?相談役の力関係難しいね。

 

 

お祭りの時は忠明と屋台をやったりして、組の行事にも積極的だし、 東郷組の縁の下の力持ちな感じ。めちゃくちゃ縁の下から出てきてるけど。

忠明が2代目になっていく過程は本編中に2段階あると思ってて、その1段階目が金三郎さん襲撃だと思います。金三郎さんが襲われたことで、忠明に2代目の自覚が芽生えたんじゃないかな~~。そうじゃないかな~~。

東郷組の精神的リーダーは銀二さんだけど、精神的な結びつきを担ってたのが金三郎さんなのかな。そう思うと、東郷組の相談役はかなり組にとって重要な役割なんだと思います。

 

そう思うと、金三郎さんが作ってた精神的な結びつきを銀二さんは上手く利用してたのかもしれないですね。自分から働きかけなくても、金三郎さんが銀二さんを東郷組に迎え入れて、組み込んでくれてたのかもしれない。組織の中に入り込んでさえしまえば、銀二さんとしてはもうどうとでもなると思ってたのかもしれない…!怖いね…!

 

南京四郎

次はスナイパー神父こと京四郎さん。若頭補佐の京四郎さん。

今若頭補佐ということは、元は銀二さんの補佐だった可能性も考えられます。つまり、銀二さんをよく理解してた人物だったのではないでしょか。結局は理解できていなかった訳ですが。そこで考えたいのが、銀二さんを疑う余地はなかったのか?という点です。あ、もちろん空想ですよ。

 

 京四郎さんは組の輪の中に入るタイプではなく、外から見守るタイプなのでかなり組を俯瞰して見ていたと思うんですが銀二さんの裏切りになぜ気付けなかったんでしょうか?銀二さんは割と頻繁に喜一さんと連絡を取っていたので、その場面を東郷組の面々に見られてもおかしくはなさそうですが、小夏ちゃんが「よく連絡を取ってる人がいる」って言った段階で誰も心当たりがなさそうなので、本当に誰も気付いてなかった可能性がありますよね。それってすごくない?完全犯罪じゃん。

栄吉さんが死んだ後に情報が洩れている事を京四郎さんが指摘してるけど、それでも銀二さんが情報を流してるところまでは辿り着いてないのを考えると、まじで誰も銀二さんを疑う人はいなかったんだという事です。すごすぎ。

京四郎さんも能ある鷹は爪を隠すタイプで最後の最後まで自分がスナイパーという事を隠していましたが、銀二さんは爪どころか鷹だという事すら隠していたんだなぁ。

 

京四郎さんという男を完全に騙せたのは、銀二さん的には大勝利だったのかもしれない。きっと、東郷組の人々の中でも一番理性的というかブレーンの立場にあるのが京四郎さんだと思うので。京四郎さんが銀二さんを信じた時点で、他の東郷組の人々は銀二さんの事を疑う余地は全くなかったんだろうなぁ、と思います。

 

新発田圭&白石良典

東郷組組員の圭さん。圭さんは西城組にはいなかった中堅くらいの組員ですね。若手ではない感じ。忠明、良典、圭の3人組の中で1番年長だし、歴も流そう。たぶん、銀二さんがはじめさんと出会った後くらいに入ってきてそう。

そして圭さんと同じく、東郷組組員の良典。3人組のちょうど真ん中の立ち位置と思いました。めちゃくちゃ若手という訳ではないけど、まだまだ喧嘩っ早くて若い青年という感じ。銀二さんに叱られながらも、真っ直ぐ育っていく途中という感じ。

 あ、例に漏れず空想です。東郷組を考えようとすると空想しかできねぇ!許してくれぇ!

 

これは純度100%の空想なのですが、圭さんと良典は銀二さん派の人間だったんじゃないか、と思います。

きっと、銀二さんが栄吉さんに直談判して若頭を交代する時に、全員が全員快く交代を受け入れた訳じゃないと思うんですよね。超有能な銀二さんから、少し不安要素のあるはじめさんに交代する訳で、きっと圭さんは若手の時から銀二さんの背中を追って来てたと思うので、色々と思う所はあったんじゃないかな、と思います。良典も何かと銀二さんを頼りにしているような感じがするので、まだ銀二さんほどに信頼をはじめさんに持ててないのかな…。

3人組の中での圭さんの立ち振る舞い方的に、銀二さんの生き様を参考にしてるところが大いにあるんだろうな~と思うんですよね。きっと、圭さん的には銀二さんは本当に頼れる兄貴分だし、自分の目指す場所だったと思うんです。だから、銀二さんが突然裏切ってめちゃくちゃ動揺してるはずなのに、銀二さんの役をちゃんと全うすることができたんじゃないかと思うんですよ。

きっと、銀二さんもそれを理解してたと思うんだよな…。偽りの自分に憧れて頑張る若手を見て何を思ったんだろうか…。圭さんは虚像を見て、虚像に憧れて、でもそれを失った時に、しっかり自分を律して忠明を支える事のできる人間になってたんですね…。

良典も、自分の辛さをぐっとこらえて、忠明のサポートに回ろうとすることができるんですね。心が強いよ…。

 

きっと銀二さんが唯一読み違えたのは、東郷組の3人組が思っていたよりも心と絆が強かったことなんじゃないですかね。銀二さん的には若手連中から瓦解していくと思ったんだろうか…。

 

東郷冬華

東郷組組長妻の冬華さん。

冬華さん役の中島玲奈さんのこのツイートを見て、もうめちゃくちゃ衝撃が走りました。ウワ...見える沼だ...。

 

 

 ここでは、空想全開にして銀二さんと冬華さんの20年について考えたいと思います。

 

まず、忠明の年齢が20~23歳とすると、銀二さんが東郷組に入ってきたのが冬華さんが出産する前後だと考えられますね。つまり、冬華さんが精神的にキツイ時期に支えていたのが銀二さんということなのでは…!?という訳です。

極道の妻として、子供を産むというのはそれはそれはかなりのプレッシャーなんじゃないかと思うんです。普通の人間が子供を産むのですら大変なのに、極道という特殊な世界に身を置いている女性の苦労は計り知れません。冬華さんは人に弱音を吐くタイプではなさそうなので、栄吉さんに頼るという事はあんまりなかったんじゃないかな。でも、きっと銀二さんはそういう人の心の些細な変化まで機敏に気付きそうなので、冬華さんが折れそうなときに支えてたんじゃないかな~と思うんです。

 

そういう事もあって次期組長の期待もあったんじゃないかな。そういう所で栄吉さんの信頼を手に入れてた側面もありそう。

冬華さんの出産を支えてたという事は、忠明が生まれた頃からずっと知ってるわけで、育児なんかも手伝ってたのかなぁ。冬華さんが極道の女として、強く合理的に生きているのはそういう背景もあったのかもしれない。

そして、冬華さんの性格や生き様を見ていると、東郷組の人々の事をきちんとヤクザとして、ヤクザという生き方をしなければならない者として一般社会や一般的な物事から厳しく線引きができる人だと思うんです。そんな冬華さんなので、組長の妻である自分と、組員の間にも線引きはあったと思うんです。でも、そんな冬華さんに友人と言わしめる程銀二さんは信頼されていた訳ですよね。極道の女として、ではなく、一人の人間としての冬華さんの心に銀二さんは触れられていたんだと思うんですよ。

 

冬華さんと20年間苦楽を共にして、結果的には東郷組を裏切って冬華さんとも刃を交える事になるんだけど、そんな冬華さんに対して「手加減しないでください。俺もしませんから。」って言える銀二さんなんなの。怖いよ。

それでもきっと冬華さんは銀二さんを止めることができると心のどこかで思ってたんだと思う。何とか説得すれば、この戦いに勝てば、銀二さんがまた東郷組に帰ってきてくれると思ってたんじゃないかな。これは、忠明もはじめさんもそう。

でも、銀二さんにはそんな気は全くなくて、忠明にとどめを刺そうとした時、何としてでも自分を止めようとする冬華さんに対して「合理的じゃない」って言ったのかな。極道の女として、母として忠明を守ろうとした冬華さんに対して銀二さんは何を思ったんだろうな。20年間の出来事をちょっとでも思い返したりしたのかな。

 

東郷忠明

東郷組2代目の忠明。色々言いたい事がある忠明。

もう空想でもなんでもいいので、はじめさんと銀二さん不在の東郷組に忠明が何を思うのか、考えさせてください。何でもします。

 

忠明は最初は世間知らずというか、ヤクザの世界に上手く身を置ききれてない青年で、それでも東郷組の面々に守られて育てられながらヤクザの生き方を見つけていくんですね。でも、見つけきれないんです。栄吉さんが死んで、銀二さんが東郷組を裏切った段階では、忠明はハッキリとヤクザとして生きていく覚悟はできていないんです。圭さんや良典に背中を押されてやっと、自覚できそうになる段階なんです。

TABOOの辛い所はそこなんですよね。成長を待ってくれないんです。忠明は青二才のまま、辛い運命を乗り越えていかないといけないんです。

つい先日まで厚い信頼を置いていた男が、自分に真剣を向けてくる。命を奪おうとしてくる。自分が死ねば、東郷組は崩壊してしまうかもしれないという思いを抱えながらも、自分の命を投げうってまで銀二さんを止めようとしたんですよ、忠明は。これは涙無くして語れなくないですか。

そんな忠明が追っていたのは組長や若頭、そして銀二さんの背中だったんだと思います。組を引っ張っていく彼らの背中を追いつつ、金三郎さんや圭さんや良典に背中を押されて成長していこうとしていたんだと思います。でも、西城組との抗争で忠明は追っていた背中を全て失ったんですね。

 

組長の息子として、きっと組長の最期を看取ったのかもしれない。ヤクザとして生きていれば人の死に触れる機会は幾らでもあるけど、近親者の死は忠明にとっては初めての事だったんじゃないのかな。親の死と東郷組2代目の責任に急に直面して、初めは知らぬ顔をしてやり過ごそうとしたんだと思うんです。自分が変わらなければ、いつもと変わらない東郷組でいられると思った心が少しでもあったんじゃないかな…。でも、現実はそうはいかなかった。圭さんと良典に諭されて、改めて親の死と2代目の責任に向き合い始めたんだと思いました。

辛い運命を抱えながら、組の命運を賭けた戦いをしなければならないんですね。やめてあげてよ…忠明はもう十分頑張ったよ…もうそんな苦しい事やめてあげてよ…。と思いますが、銀二さんはやめません。銀二さんはバリバリに西城組として東郷組を堕とそうとしてきます。そんな銀二さんを見て、忠明が思ったのは”銀二さんを止める事”。

ここで、裏切者の銀二さんへの恨み、だとか制裁を加える、ではなくて”止める”というのが忠明が栄吉さんや東郷組の人々から教えられてきた任侠の心なんだと思いました。銀二さんの事も救おうとしてるんだと思いました。でも、銀二さんとしては、東郷組からやっと解放された今こそが救われている瞬間という。酷い現実。東郷組と銀二さんの心の大きな隔たりが露骨に描かれてて苦しいですね。

幼い頃からずっと一緒に生きてきた男に、刃を向けられてその身を傷つけられて、命を奪われそうになるのは、どんな気持ちなんでしょうか。辛すぎて深く考えられない。ここを深く考えると、めちゃくちゃ泣く。いずれ向き合います。

それでも、忠明の苦しみは終わらないんですね。

きっと忠明にとって1番苦しかったのは、はじめさんが自分の目の前で人を殺めてしまった事なんじゃないでしょうか。はじめさんも腕っぷしが強いので、喧嘩喧嘩の日々だったんだと思うんですが、人を殴って傷つけることはあっても殺すまではしてなかったんじゃないかと思うんです。それがはじめさんのヤクザとしての弱さであったかもしれないけど、はじめさんの優しさでもあったんじゃないのかな。そんなはじめさんを見てきてたと思うんです。忠明は。

それに、たとえヤクザであっても、人を殺せば捕まります。冒頭に弐月が刑務所に入っていたように、法で裁かれます。忠明はヤクザとしてはじめさんを失う事、そしてはじめさんが”ヤクザに出会う前に芝居に出会っていたら、俺は役者になってたかもしれない”と、ヤクザではない生き方に希望を持っていた事がわかっていたので、はじめさんが人を殺してしまう事をあんなに拒絶したのかな、と思いました。

 

あの忠明の叫び声がいつまで経っても忘れられないんです。私がこんなにTABOOに囚われているのは、あの忠明の叫び声の所為だと言っても過言ではない。

 

忠明の三重苦を噛み締めたうえで、色々失った忠明が何を思うのか…ですが、語られた部分を咀嚼した上で、何故忠明は西城組を許したのか、を考えたいですね…。

正直、忠明の立場からすると西城組の事はめちゃくちゃ憎いんじゃないかと思うんです。西城組の所為で銀二さんは裏切って、はじめさんは人を殺す羽目になったと思わざるを得ないはずなんですよ…。きっと…。ドーラさんがはじめさんに”西城組を赦したんだ”と言ったという事は、相当予想外だったことだと思うんですよね。なんなら、圭さんや良典が断固反対したのを押し切って西城組を赦すことにした可能性だってあるじゃないですか。でも、それってなんでなんだろう。なんで忠明は西城組を赦したんだろう。

 

もしかしたら、銀二さんの事を想っての事なんじゃないかなって思いました。

銀二さんの裏切りは西城組の為で、赦しがたい事だけど、西城組を潰してしまうのは銀二さんの20年間を否定してしまう事になると思ったんじゃないかな。銀二さんが東郷組にいた20年間は嘘偽りだったかもしれないけど、忠明が見ていた銀二さんは嘘でも偽りでもなくそこにいる銀二さんで、自分が憧れた背中を無下にすることはできなかったんじゃないのかな。東郷組を裏切った結果、仲間に殺されて、無念のうちに死んでいった銀二さんを救おうとしたんじゃないのかな。なーんて、全部空想なんだけどね。

 

瀬崎一

ここに来て、TABOOで一番深い沼が来ましたよ!!この沼を語らずしてどうTABOOを語るんだい、と言いたいところなんですけど、この沼めちゃくちゃ苦しいんですよね。酸性ですか?浸かった瞬間殺されますか?甘んじて浸かりましょう。

 

そもそも、銀二さんは何故はじめさんを拾ってきたんでしょうか。はなっから裏切る気があるなら、東郷組の構成員は手薄の方がいいはず。しかもなかなか尖ってるはじめさんを拾ってきたわけですから、何か思惑があるはずなんです。

いや…何にでも理由を追い求めるのはオタクの悪い癖…もしかしたら、本当に、銀二さんの気まぐれだったのかもしれない…。ただただ、面白そうなやつだと思って、近くに置いておいただけなのかもしれない…。この世には理解の範疇を超えた考えもあるのだから…。

はじめさんと出会った時は、西城組だとか東郷組だとか、そういうしがらみ的なものを度外視して、銀二さん個人の愉しさを優先させたのかもしれない。弐月が銀二さんを殺した時みたいに。この時に、銀二さんがはじめさんを拾わなければ、銀二さんは裏切りを成功させて西城組が天下を取っていたかもしれない。はじめさんは尖って生きてる中で芝居に出会って役者になってたかもしれない。

あるはずのない”ハッピーエンド”の可能性を夢想して現実の結末の苦しさをより際立させる厄介なオタクです。

 

銀二さんがはじめさんを拾ってきたのが気まぐれだとして、どうして若頭をはじめさんに譲ったんでしょうか?

これは、本当にもしかしてもしかすると、銀二さんははじめさんに対してはヤクザとしての建て前でなく、個人の気持ちで接していたんじゃなかろうか。自覚はなかったのかもしれないけど。西城組の人間として、東郷組をいつか転覆させる事を考えているなら、はじめさんを若頭にする理由がないはずなんです。絶対に銀二さんが若頭で、2代目の期待を背負ったままの方が転覆しやすいに決まってるんです。でも、それを差し置いてまで、はじめさんに若頭を譲ったんですよ、銀二さんは。

一人の人間として、自分が見出だした原石が輝くところを見たいと思ってしまったんじゃないでしょうか。

それでも、いつかはじめさんと袂を分かって対立することはわかっていたはず。むしろそうなる事すら望んでいたかもしれない。自分の育てた男が一人前になって、その立場と責任を背負って自分と対峙する事すら待ち望んでいたのかもしれないですね。銀二さんにとって、最高のステージを作っていただけなのかも。

 

銀二さんがはじめさんに贈った「やってできねぇことはねえ」という言葉。

これはきっと本当にそのまま銀二さんの本心なんだと思いたい。西城組とか東郷組とか、天下統一とかヤクザとか使命がどうとか責任がどうとか、全部度外視した銀二さん一個人の心から出た言葉なんだと思いたい。一人の人間の大政銀二から、一人の人間の瀬崎一に贈った言葉なんじゃないかと思いたい。

そして、この言葉は一人の人間の瀬崎一から一人の人間の鈴木卓也に贈られることになるんだと思うんですよ…。ね…。きっとそういう事なんです…。これ、私の死の間際に見る幻覚でよろしくお願いします…。

 

銀二さんがはじめさんに対して、一個人として接していたという大前提を心に置いて、大立ち回りのフィナーレを思い浮かべてください。

銀二さん、死ぬ直前に笑ってますよね…???????これ、観た人なんでかわかりました?????????

私、正直全然わかんなかったんです。なんで銀二さんが最後に笑ったのか。なのでめちゃくちゃ考えました。考えすぎて飛躍した物の考え方をしてるかもしれないけど、これが私の空想TABOOです。

 

銀二さん、最後の最後にはじめさんに、やっと一人の人間として認識してもらえたのを喜んでるんじゃないかと思ったんです。

はじめさんは銀二さんと刃を交えた瞬間でさえ、東郷組の大政銀二として接してたので、銀二さんも「さん、じゃねえだろ。銀二だろうが」と言ったんじゃないかと思いました。お互いに西城組と東郷組を背負っている人間として戦っているんですよね。ここ。照明も、赤と青が混じっています。

ただ、銀二さんがはじめさんに敗れた瞬間、照明が白一色になるんですね。この前段階で西城組と東郷組のテーマカラーの赤と青を強調しているなら、はじめさんが勝った時は青が強調されるんだと思ってました。でも、実際は白一色。何か意味があるんじゃないかなって思ったんです。

もしかして、もしかすると、この2人の決着がついた時点で、もうお互いの組の事は頭になく、それぞれ一人の人間として対話してたんじゃないかと思うんです。きっと、西城組の銀二さんは、東郷組が天下を取ったところで東郷組には戻らないと思います。その選択はきっとしないと思うんです。でも、あの場面では、「強気だな、それでいい」と肯定しています。それは、たぶん西城組の銀二さんとしてではなく、20年間はじめさんと苦楽を共にしてきた一人の人間の大政銀二としての発言だったんだと思いました。

そして、最後に弐月に刺され倒れていく銀二さんに対して、はじめさんは「銀二さん、銀二!」と呼びかけるんですね。最後の最期で、東郷組の銀二さんではなく、わざわざ「銀二」と呼び直したのは、はじめさんも東郷組のはじめさんではなく、一個人の瀬崎一として呼びかけたんじゃないかと思います。

それで、銀二さんは20年間自分が手塩に掛けて育ててきた男が一人前になって自分から勝利を奪えるほど強くなったのを身に受けて、最期にはお互いに一人の人間として接することができた満足感からの笑みだったんじゃないかと思いました。

苦しいよ…苦しすぎるよ…自分の空想で苦しんでるだけなんですけどね…こういう可能性もあるよね…きっと…。

 

おわりに

びっくりするほど長く語ってしまいました。

当初はこんなに熱が入る予定ではなかったんですが、書きながら配信を何回も見返してるうちにこんなに熱があがって、結果2万5000字くらいになりました。卒論です。

これは本当の話なんですが、劇場で見れなかったことを死ぬほど後悔しています。これは劇場で見たかった。一生悔やんで生きる。

 

自分の空想家という性分も大いにあるとは思うんですが、ここまでTABOOにのめりこめたのはひとえに、役者の皆さんの演技の素晴らしさにあると思うんです。私の超個人的な持論ですが、演技の良し悪しって感情がうまく乗ってるとか、台詞回しがうまいとか、そういう事じゃなくて、観客と物語の架け橋になれているかどうかだと思うんです。これは完全に見ている側の主観ですけど。めちゃくちゃ感情が上手に表現できていたり、台詞の言い方がめちゃくちゃかっこよかったり、そういう役者さんももちろん好きなんですが、役者さんの立ち振る舞いや言葉から役が見えてくるのって、そういう上手さと別にあると思うんです。いくら上手でも役が見えてこない人もいるし、演技に粗はあるけど役が見えてくる人もいます。

今回のTABOOは全く初見の役者さんがほとんどだったので、余計にそう感じたのかもしれないですが、とても物語に触れやすい役者さんばかりで感動しました。月並みな言葉で言うところの、役が生きているという感じ。

脚本も簡潔でわかりやすいストーリーなのに、登場人物の感情やら思いやらメッセージがしっかりした重さがあって、スッと心に入ってくる。そしてなにより、観客が空想を膨らませる余地のある物語なのが最高でした。演劇のよさって、観客が物語の語られていない部分を想像できるところにあると思うんですよ。これが映画なら、ここに回想がはいるんだろうな、とか小説なら細かく描写されてるんだろうな、とかいう部分を観客が想像力で補えるのがお芝居の難しさでもあり、愉しさでもあると思うんです。TABOOはストーリー的には補わずとも完成しきってるんですが、随所に観客が空想する余白があって上手いな~~と思いました。

 

長々と書きましたが、

TEAM空想笑年さん、めちゃめちゃ最高でした!

TABOO、め~~~~~~ちゃめちゃ最高でした~~~!

次回作も楽しみにしてます。